6299777190465681 関節リウマチと一般感染症のリスク | 感染症・リウマチ内科のメモ

関節リウマチと一般感染症のリスク

感染症・内科一般

関節リウマチ患者は感染症にかかりやすいのか?感染症といっても多彩なのでここでとりあげるのは、市中肺炎や皮膚軟部組織感染といった一般の方もかかる”一般的な”感染症についてです。結核や肝炎、その他特殊で日和見感染を起こすような感染症群はまた別に取り上げるつもりです。様々な論文がありその結論も様々ですが、通してみるとおおまかな形がみえてくると思います

関節リウマチ患者の感染症リスク

・関節リウマチ (RA) 患者は、RA を持たない者と比較して感染症リスクが高くなる
・高齢者RAの人口ベースのコホート研究で重篤な感染症は46.4イベント/ 1,000人年の発生率で、最も頻繁なのは呼吸器感染症、帯状疱疹、および皮膚/軟部組織感染症 (Arthritis Care Res (Hoboken). 2013 Mar;65(3):353-61.)

・RA患者の感染リスクは、使用する薬剤、併存疾患(糖尿病や慢性肺疾患など)、健康習慣(喫煙などのライフスタイル)、その他の要因によっても影響を受ける
・患者における重篤な感染症を予想するリスクスコアの開発では、リスクスコアの構成要素に、年齢、過去の重篤な感染症、グルココルチコイドの使用(1日あたり10mg以上)、赤血球沈降速度の上昇、RAの関節外症状、および併存疾患(冠状動脈性心疾患、心不全、末梢血管疾患、慢性肺疾患、糖尿病、アルコール依存症)が含まれ、検証分析により、良好な識別が明らかになった。(Arthritis Rheum. 2012 Sep;64(9):2847-55.)
・ドイツの生物製剤レジスタRABBITに登録されたRAでの研究 (Ann Rheum Dis. 2011 Nov;70(11):1914-20.)
 高年齢、慢性肺疾患または慢性腎疾患など合併症、または重篤な感染症歴の危険因子と、抗TNF阻害薬、DMARD、グルココルチコイド投与量の薬剤情報により感染症発生率は予測される
詳細は、以前のブログ「抗TNF阻害剤と感染症:リスクプロファイルに基づく予想感染率の算出」参照


・感染症は、RA 患者がその後医師によって処方される治療の種類を制限する可能性もある

薬剤別の感染症リスク

グルココルチコイド用量の使用が、重篤な感染症に関連する独立した要因であることがわかっている。
プレドニゾンで7.5 mg/日 以上は、非使用者と比較して入院を必要とする感染症の発生率が 6倍以上

生物学的製剤のTNFα阻害剤
・重篤な感染症は生物学的製剤開始後最初の1-2年以内に発生し、重篤な感染症のリスクは治療開始から最初の6か月で最も高くなる。
・このリスクは従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の使用と比較して高い。
・従来型DMARDはこのリスクを増加させず、感染リスクを減少させる可能性さえある
・生物学的製剤による感染リスクの増加は、プレドニゾン用量が10 mg/日を超える (または 15 mg/日を超える) 場合に見られる増加よりもまだ低い
・ほとんどの分析では、インフリキシマブ(場合によってはアダリムマブも)は、エタネルセプトやリツキシマブよりも重篤な感染症の高いリスクと関連していた。アバタセプトはインフリキシマブやアダリムマブと比較して安全

メトトレキサートと感染症との間に有意な相関関係は確立されていない
・患者における入院感染のリスクについて、生物学的製剤はわずかな増加、メトトレキサートとヒドロキシクロロキンはリスクの減少と関連していた (J Rheumatol. 2008 Mar;35(3):387-93.)
・細胞傷害性薬剤(例、シクロホスファミド、アザチオプリンなど)と感染リスクについては増加をもたらすようだが、その使用普及率が低いため、統計的有意性には達していない
・ヤヌスキナーゼ阻害剤(JAKi)はTNF阻害剤と重篤な感染症に関しては類似していることが示されている。JAK 阻害剤は帯状疱疹(HZ)のリスクが数倍高いことが報告されている。(Semin Arthritis Rheum. 2023 Feb;58:152120.)

リウマチ活動性と感染症リスク

・RA疾患活動性CDAIでみると、低疾患活動性より持続寛解の方のほうが、また中等度から高度疾患活動性より低活動性の方のほうが、100患者年当たりの重症感染症の発生率は低かった。 RA疾患活動性を可能な限り低く抑えるという目標は、重症感染症のリスクの低減につながる可能性がある

まとめ

・RA患者では、感染症リスク要因が高いほど、多いほど(上記、リスクスコアの構成要素 など参考)感染症を起こしやすくなる
・薬剤別ではステロイドは用量に応じてリスクが増加する、他の薬剤についてははっきりしない。生物学的製剤のTNFα阻害剤は治療開始後しばらくはリスクが上がるようである、ステロイドとの併用でリスクが増大する
・感染リスク対策のためにも初期のステロイド治療は早く漸減中止し、抗リウマチ薬や生物学的製剤による治療へもっていく
・市中肺炎、皮膚/軟部組織感染症などの一般的な重篤な細菌感染症は、RA患者でも一般の人に見られる微生物と同様の型によって引き起こされる可能性が高い。例えばほとんどの皮膚/軟部組織感染症は黄色ブドウ球菌や連鎖球菌属によって引き起こされ、市中肺炎は肺炎球菌など一般の人での原因と同様の微生物によって引き起こされる。
・なるべくRA患者は免疫抑制療法を開始する前に、肺炎球菌ワクチン接種を受けたり、またインフルエンザワクチン接種は毎年行うなど予防接種が推奨される

参考文献
Arthritis Care Res (Hoboken). 2018 May;70(5):679-684.
Curr Rheumatol Rep. 2016 Oct;18(10):61.
Arthritis Rheum. 2012 Sep;64(9):2847-55.

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