6299777190465681 渡航帰りの感染症 とくに麻疹疑い例への対応、感染対策とは | 感染症・リウマチ内科のメモ

渡航帰りの感染症 とくに麻疹疑い例への対応、感染対策とは

感染症・内科一般

前回のつづきです。述べましたように近年は、麻疹の疫学は変化し、とりわけ排除国では発生は稀ですが輸入された感染例と主にワクチン不全の人が罹患する疾患という状況を示してきています。さらに頻度は低いが麻疹はワクチン接種者にも出現し得るためさらに複雑な様相です。
こういった状況で、医療従事者などはどのように対応したらよいのでしょうか? いろいろな文献や資料からまとめてみました。 想定は、渡航帰りの方で、発熱と発疹がある方の初療です

●渡航帰りの感染症の検討 

病歴 国だけではなく、地域、都市名も聴取する 滞在は⽥舎なのか 都市部のみなのか
現在のその国の流行状況確認は FORTH(厚生労働省検疫所)の海外感染症発生情報 も参考に
現地での⽣活内容や同⾏者、動物や虫など接触有無 (⾍刺され 「かまれてない」は当てにならない)
潜伏期間を参考にする (滞在期間および発症日から) CDC, yellowbook 2020 などを参考に
渡航感染はだいたい 14 日以内の疾患と、それ以上の疾患に分かれる
やはり 3⼤渡航疾患– マラリア、デング熱、腸チフス はいったん念頭におくが、実際帰国後受診者の診断で多いのは– 急性下痢症、動物咬傷、急性呼吸器感染症、とのこと

●発熱+発疹の鑑別

膨大な鑑別疾患数があるが、簡便には、症状から考えるべき感染症 ; 日本感染症学会 感染症クイック・リファレンス などを参考に

●病歴と身体診察で麻疹を疑ったら

病歴や症状、身体診察から、麻疹を疑う、麻疹ワクチンの接種歴を聞く (たとえ 2 回接種歴があっても否定しきらないこと)
カタル期と発疹期が明確にあり、発熱、斑点丘疹性発疹および以下のうちいずれかがあり(咳、鼻風邪、結膜炎)、コップリック斑も口腔粘膜にみられるといった典型麻疹なのか、それらの一部がみられない非典型なのか(非典型であっても、修飾麻疹の可能性に留意する)
麻疹は空気感染でありそれが否定されるまで単独空調設備下の個室に隔離する
もしそれまでに接触したもの、医療従事者がいれば、接触者リストアップしておく

●対応する医療従事者の確認事項

対応や介助を予定している医療者が果たして対応してよいのかどうか?

・1 歳以上で 2 回のワクチン接種歴の確認、(入職時など検査していれば)麻疹抗体検査歴および結果の確認
・その後麻疹ワクチン接種しているかどうか (これらは平時から行い病院事務などでデータ把握しておく)
→ 詳しくは、日本環境感染学会ワクチンガイド第 3 版参照

免疫があると思われる医療従事でも麻疹に罹患してしまう(修飾麻疹)場合があることに留意
免疫があると思われる医療従事者 とは:過去 2 回ワクチン接種歴ある、既罹患で未接種だが抗体検査で一定以上あった
日本環境感染学会によると麻しんでは EIA 法 IgG16.0 以上、PA 法 1:256 以上、中和法 1:8 以上で陽性
とりわけ典型麻疹症例については感染力が極めて強いため免疫があると思われる医療従事者でも 対応時はN-95 マスクを装着することが望ましい。
IDSC 医療機関での麻疹の対応について では、
麻疹に対する免疫があることが確実なスタッフは特に防護はなくとも対応可能だが、他の疾患の可能性もあるので、サージカルマスクの着用が推奨される としている。
上記を満たしておらず追加のワクチン接種が未、または接種が不可である医療従事者については、麻疹例および疑い例には従事しないよう配慮すること。
やむを得ず対応する場合は、本人の防護のために N95 マスクを着用すべきであるが、完全に発症を予防することは困難
大阪市立総合医療センターでは上記ワクチンガイドラインの基準を満たしていても, 麻疹確定例および疑い例の診療に携わる際には全員, N95 マスクを装着することにしている(IASR Vol. 40 p48: 2019 年 3 月号)
医療機関での麻疹対応ガイドライン 第七版 国立感染症研究所 感染症疫学センター 平成 30 年 5 月
も参照を

●麻疹の検査

とりわけ非典型麻疹(修飾麻疹疑い)では IgM 応答が変化しウイルス量もより少ないためウイルスの検出がより困難で、血清抗体検査に加え、検体の PCR セット(尿サンプル、咽頭ぬぐいの綿棒)を検査提出することが強く推奨される
多くの医療機関で血清抗体検査はオーダーできると思われるが 3 日ほど要する、PCR はオーダーできないが、多くの地域で保健所経由で地方衛生研究所等検査機関で検査できると思われる、早ければ当日判明する

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