6299777190465681 ステロイド治療の終了後の諸症状、続発性副腎不全、ステロイド離脱症候群 | 感染症・リウマチ内科のメモ

ステロイド治療の漸減中や終了後の諸症状について

リウマチ・免疫

プレドニン錠などの経口糖質コルチコステイド(以下OCS)はリウマチ性多発筋痛症などのリウマチ性疾患、また喘息など様々な疾患の治療として長期間使用されます。その漸減中や中止後に倦怠感や筋肉痛など不快症状をしばらく訴えられる方もおられます。当科通院患者でも訴えとしてときおり経験しますし、また他病院でなんらかでOCS治療後終了されてしばらくたってから、関節痛や筋痛症がでてきてリウマチ発症ではと当科紹介されることもあります。病態的な機序としては誘発性副腎不全症の一種と思われますが、その症状は非特異的であり、基礎疾患や併発疾患の症状と重複することもあり、診断が見逃されがちであります。

続発性副腎不全症

続発性副腎不全(以下AI)は、正常な視床下部および/または下垂体前葉の機能が障害され、副腎皮質からのステロイドホルモンの分泌減少を引き起こす何らかのプロセスの結果として発生する
二次性 AI は、糖質コルチコイドが不足しているがミネラルコルチコイドの産生は維持されている状態で、一次性 AI よりも頻繁に発生し、有病率は 100 万人あたり 150 ~ 280 人と推定されている
二次性 AI の最も一般的な原因は、生理学的用量を超える用量で 1 か月以上にわたって投与された外因性コルチコステロイド療法(外因性とは生理的に作られているコルチコステロイドに追加して薬剤として投与されていること)
コルチコステロイド治療(以下OCS)は視床下部-下垂体-副腎(以下HPA)軸機能を抑制する可能性があり、持続すると内因性 ACTH の欠乏により副腎皮質形成不全または萎縮が引き起こされる
OCS用量が多ければ多いほど、また治療期間が長ければ長いほど、AIを発症するリスクは高くなる。しかし、体系的な文献レビューでは、OCS療法の累積投与量または期間と AI との明確な関係は確認されていない
コルチコステロイドの作用と代謝(特にCYP3A4活性)の個人差も、AIの発症傾向に影響を与える

OCSによって引き起こされる AI は十分に臨床にて認識されておらず一般的に診断されていないが、多くの場合、健康状態の低下を伴い、まれに副腎クリーゼが発生した場合、生命危機的になる可能性がある
成人における糖質コルチコイド治療と AI を調査した最近の系統的レビューでは、AI 患者の割合の中央値は 37.4% (四分位範囲: 13% ~ 63%)

しかし漫然と長期間にOCS療法を続けると有害な副作用(例:高血糖/糖尿病、高血圧、脂質異常症、若年性心血管疾患CVD、骨減少症/骨粗鬆症や白内障など)の重大なリスクにさらされる

長期にわたる OCS 療法からの離脱は効果的かつ安全に実施する必要があるため、重要な課題である
AI の早期発見と治療、および日常の臨床診療における安全な OCS 離脱を確実にするための最適な戦略はまだ定義されていない

副腎不全症の症状

AIの臨床症状は多岐にわたり、多くの場合、いくつかの非特異的特徴が含まれる
AI の主な訴えは疲労感である
疲労感以外に、脱力感、胃腸障害 (吐き気、嘔吐、下痢、腹痛)、食欲不振/体重減少、頭痛、発熱、筋肉痛、関節痛、精神症状、線形成長の不良および/または体重増加の不良など が含まれる
部分的に抑制されている患者では、AI の臨床的特徴は軽度であるか、あるいは存在しない場合があり、急性ストレス期(感染、外傷、その他の急性ストレスなど)にのみ発現する
このような事象がOCS 中止から数週間または数か月後に発生した場合、HPA 軸の抑制と OCSの使用との関連性が確立されない可能性がある

長期間OCS中止後の病態把握には以下の4つが重要: 
・治療されていた基礎疾患が再発した
・長期間持続している可能性のあるHPA軸抑制
・精神的依存
・HPA軸機能は正常であるが非特異的離脱症候群

・Amatrudaらは、ステロイド離脱症候群について、HPA軸検査に正常に反応する患者に起こる、脱力感、吐き気、関節痛などの非特異的症状を伴う、真の副腎不全に似た複合症状であると最初に定義している(J Clin Endocrinol Metab. 1960 Mar;20:339-54.)

OCS治療後のHPA軸の回復

HPA 軸機能の回復は予測不可能であり、副腎機能の回復に予想される時間経過を正確に記述するデータはほとんどない
外因性コルチコステロイドの中止後、HPA 軸の抑制はすぐに(数時間または数日以内に)解消することもあれば、場合によっては 1 年以上持続することもある。さらに、一部の患者では、内因性コルチゾール分泌が永続的に抑制されたままである
成人におけるグルココルチコイドの全身療法と AI の系統的レビューでは、患者の 75% が OCS 中止後 10 週間(使用期間 4 週間以上)でも AI が持続していたが、15% は中止後 3 年経っても AI が残っていた。

OCS誘発AI症状は、プレドニゾロン治療離脱抵抗(なかなか漸減できない中止できない)の原因となっている可能性があり(例えば、筋痛や関節痛など訴えが続けば現病が収まっていないと判断されうる)これがリウマチ性疾患に対し予想される期間を超えてOCS治療が使用され続けている理由の一部を説明している可能性がある

OCS中止後の軽度から中等度のAI症の治療に対する臨床的意義、つまり適応は確立されていない
二次性 AIは持続期間の中央値10 か月程度で自然に治まると予想されるが、その管理にはGC の用量を一時的に増加し、その後維持用量まで徐々にゆっくりと漸減するなどが考えらえる。

参考文献
Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2023 Jun 1;30(3):167-174.
J Clin Endocrinol Metab. 2022 Jun 16;107(7):2065-2076.
J Intern Med. 2021 Aug;290(2):240-256.
Semin Arthritis Rheum. 2016 Aug;46(1):133-41.

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