6299777190465681 夜間の脚のけいれん、いわゆる こむらがえり | 感染症・リウマチ内科のメモ

夜間の脚のけいれん、いわゆる こむらがえり

感染症・内科一般

外来を行っておりますといわゆる「こむらがえり」について訴え、相談を受けることも多々あります。その原因はなんなのか?対処方はどうか?何をお薬を といわれ芍薬甘草湯を出すことが多いですね。医学文献ではどうでしょうか。

夜間の脚のけいれん

睡眠中に起こることが多く、夜間の脚のけいれん (nocturnal leg cramps :以下NLC) は、睡眠の質に影響を与える
数秒から最長 10 分間続く激しい痛みを伴う不随意の筋肉収縮
ふくらはぎのけいれんは非常に一般的で全体的な有病率は29.9%~37%との報告がある、年齢とともに増加する
20% では日中安静時にもけいれんが発生

米国睡眠医学会 (AASM) による診断基準の 3 つを満たす: 突然の筋肉の収縮に伴う脚の痛み、就寝中に起こる痛みを伴う筋肉の収縮、影響を受けた筋肉を強く伸ばすと痛みが軽減される
Joannesらは文献の系統的レビューから夜間の足のけいれんの7つの診断的特徴を特定した:激しい痛み、数秒から最長10分の継続期間、ふくらはぎや足の部位、大腿部やハムストリングスは稀、その後の持続的な痛みあり、睡眠妨害および苦痛 (BMC Fam Pract. 2017 Feb 28;18(1):29.)

高齢など身体運動活動量が少ない成人は、筋肉の長さが短縮している可能性が高く、これが危険因子となる
静脈瘤や関節炎を患っているなど、下肢の活動や関節可動域が低下している人の間でもこの疾患の有病率が高い
このほとんどは特発性であり、病因については現時点で一致した見解はない
複数の研究では、NLC と血液量減少や電解質障害との関連性を証明できていない
けいれんは神経因性のプロセスであることが一般に受け入れられている。 しかし、その起源については依然として議論の余地がある

関連しうる医学的状態には、末梢血管疾患、冠状動脈疾患、慢性肝不全や肝硬変、腎不全や血液透析、がん治療、腰部管狭窄症、末梢神経障害、妊娠、マグネシウムやカルシウムなどの電解質障害、脱水症など
関連しうる薬剤には、スタチン、サイアザイド系利尿薬、長時間作用性β2刺激薬、静注用鉄剤、ラロキシフェン、結合型エストロゲン、ナプロキセン、テリパラチドなど

鑑別疾患

その原因に重大な疾患がある場合もあり、初期評価にはふくらはぎのけいれんを正確に識別する必要がある
深部静脈血栓症(DVT) 片方のふくらはぎの痛み、熱感、浮腫、 診断ツールとしてDVTリスクを評価
横紋筋融解症 不慣れな運動後等で急な筋肉痛と筋力低下、茶褐色尿、 急性コンパートメント症候群を引き起こすことも

NLC はレストレスレッグス症候群 (RLS) と混同されることがよくある
RLS は脚、足、または腕の不快な感覚を特徴とし、その不快な感覚を部分的または全体的に和らげるために手足を動かしたいという衝動を伴う 通常、夕方または夜の休息中に発生する
特発性周期性四肢運動障害 (PLMD)  睡眠中に約20~30秒間繰り返される脚のけいれん運動 睡眠中の発症は必ずしも人を覚醒させるわけではない 覚醒時の訴えは睡眠中よりも激しくなる 
Joannesらの7つの診断的特徴(上記)はこの病態の認識を高め他の睡眠関連の筋骨格系障害から区別するのに役立つ

夜間の足のけいれん治療

ビタミンB6、鎮痛薬、ビタミンE、ベラパミルの使用に関するエビデンスは限られる
日本ではその予防、治療に芍薬甘草湯を使用することが多く、効果を報告した文献も多い

けいれんを軽減するための安全で簡単な対処法として、深部マッサージとストレッチが推奨される
立位でのふくらはぎのストレッチには、「体幹をまっすぐにし、かかとを床につけたまま、体幹が前に進むように前膝を曲げふくらはぎを伸ばす」(下イラスト) (J Physiother. 2013 Dec;59(4):279.)
就寝前および脚がけいれんしている間に、ふくらはぎとハムストリングのストレッチを10 秒間持続で3 回繰り返すことを推奨している
75歳以上の高齢者でふくらはぎとハムストリングのストレッチを毎日行ったグループでは、6 週間後、NLC の頻度と痛みの強さは対照群と比較して有意に減少した(Geriatr Nurs. 2020 Mar-Apr;41(2):105-109.)
急性けいれんの治療には、けいれんを起こす筋を伸ばすこと(たとえば、腓腹筋のけいれんに対しては足首の背屈)

レストレスレッグス症候群RLS および夜間の下肢けいれんは、外側皮下静脈叢 (LSVP)逆流との強い関連性を示した(J Vasc Interv Radiol. 2023 Apr;34(4):534-542.) その治療は1年以内に症状が軽減された

参考文献
Singapore Med J. 2022 Dec;63(12):746-752.
Geriatr Nurs. 2020 Mar-Apr;41(2):105-109.
BMC Fam Pract. 2017 Feb 28;18(1):29.

コメント

タイトルとURLをコピーしました