前回の続き、麻疹の診断における、特有の口腔粘膜所見とされる、コプリック斑についてです
その特徴や注意点などを文献からまとめました
日本国内では今後ますます稀な疾患になっていくと思われ、診察の経験のない若手医師も多いのではないでしょうか
ぜひ参考にしていただければと思います
コプリック斑Koplik Spotsは頬粘膜に存在する特異な斑点であり、発疹前段階の麻疹の診断/病理学的特徴と考えられている
コプリック斑という用語は、1896 年に初めてそれらを説明したニューヨークのHenry E. Koplik博士に由来している
特徴
頬粘膜上にコプリック斑が現れるのは、通常、発疹が現れる 数日-1日前
この兆候は麻疹の早期診断に非常に役立つ
第一大臼歯の反対側の頬粘膜に、周縁紅斑性輪を伴って、わずかに隆起した直径約2~3mmの青みがかった白色の斑点として現れる
この特徴的な外観は、“grains of salt on a red background.”「赤い背景にある塩の粒」と呼ばれることもある
青みがかった外観は粘膜下腺管周囲の拡張した静脈の色によるもので、白い部分はおそらく腺上皮細胞の破壊によるものと考えられる ( Xavier and Forgie、2015 )
場合によっては、軟口蓋、結膜ひだ、膣や腸の粘膜などの他の領域にも発生することがある
その後粘膜上の斑点はその特徴的な外観を失い不連続になり、その表面に多数の青みがかった白い斑点がランダムに散在、びまん的な赤い背景が生じてくる。最終的には、数日後に粘膜は通常の外観に戻る。
発疹期の 2 日目までに消失する
コプリック斑のあるほとんどすべての患者には舌苔がある
報告によると、コプリック斑は麻疹患者の 60% ~ 70% に出現する(Public Health Rep. 2019 Mar/Apr;134(2):118-125)
ワクチン接種を受けていたにもかかわらず、麻疹に罹患した患者にはコプリック斑が存在しない場合がある
鑑別診断
・フォアダイス斑(顆粒Fordyce granules)(明るい赤色の背景がない)口腔粘膜に生じた異所性脂腺
・アフタ性潰瘍(痛みを伴う、数は少ない)
・パルボウイルス B19感染など他ウイルス感染による口腔病変
日本で2009-14年にかけて麻疹疑い患者3023人を対象にさまざまなウイルスPCR検査調査を実施、コプリック斑は23.7% で観察されこのうち麻疹ウイルスは28.2%だったが、風疹ウイルス、パルボウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型など2~3種類の他のウイルスでも検出された (Front Microbiol. 2019 Feb 18;10:269.)
麻疹の診断マーカーとしてのコプリック斑点の感度と特異度は、それぞれ48 % と80%であった
この兆候は疾患特有のものではない可能性があると示唆された
しかしこの研究ではコプリック斑写真は入手できておらず、ウイルスによる所見の違いがあるかどうかは検証されていない
(他の類似した口腔病変がコプリック斑に誤って分類された可能性はあるかも…)
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