6299777190465681 熱中症の特徴と対応、予防について | 感染症・リウマチ内科のメモ

熱中症の特徴と対応、予防について

感染症・内科一般

当科では発熱性疾患の相談や初診を受けることも多く、この時期ですと熱中症は鑑別から外せません。この時期注意すべき熱中症につき一般の方、医療者の方にも使えるような情報を提供します。

まず暑さ指数について

・現在の自分の住んでいる場所の気候は、どの程度熱中症のリスクがあるのか?
暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度) とは、人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目し、気温、湿度、日射・輻射、風の要素をもとに算出する指標として、熱中症予防に用いられている。
暑さ指数(WBGT)= 0.7×湿球温度 + 0.2×黒球温度 + 0.1×乾球温度
 危険31以上、厳重警戒28以上31未満、警戒25以上28未満、注意25未満 とされていて、例えば 危険 では、高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。としています

居住地の暑さ指数をみてみましょう  ※環境省熱中症予防情報サイト 

・『熱中症警戒アラート』とは、暑さ指数(WBGT)算出地点のいずれかで、日最高暑さ指数を33以上と予測した場合に発表されています
・これらは、環境省の熱中症環境保健マニュアル 2022 に詳しいです、ぜひ参照をおすすめします

熱中症の特徴

・熱中症(熱関連疾患heat-related illness)には、熱射病(heat stroke)、熱疲労(heat exhaustion)、熱けいれん、など多くの分類があります

・熱中症とは、体温調節の補償限度を超えたコア体温の上昇と、高温への暴露から、身体への生理的障害、と定義
・熱中症は、視床下部機能の変化ではなく、環境熱ストレスによって引き起こされる
・用語・熱射病heat strokeは、典型的には少なくとも40°Cまで上昇コア温度と、中枢神経系(CNS)機能不全の存在を示す
・労作性熱射病(EHS)と古典的熱射病(CHS):熱中症には2つのカテゴリーに分かれる。 古典的熱射病は高い環境温度の曝露から生じ高齢者と小児の間でより一般的で、労作性熱射病は激しい運動によるもので通常は若い成人に発生

・体は伝導、対流、蒸発、放射の4つの基本的なメカニズムによって、環境に熱を放散している
湿度が約75%を超えると汗の生理学的に有効な蒸発が停止するため、相対湿度と温度は、熱ストレスを評価する際に独立して考慮するべき。 95%の相対湿度では発汗の冷却効果が本質的に無効になる
・高温による損傷を最も受けやすい2つの組織は、脳、特に小脳、および肝臓である。これに基づき、熱射病の診断についての共通の理解は、CNSの変化および肝細胞損傷の証拠(上昇した肝機能検査LFTs) を必要とする
・中枢神経系の機能不全は、めまい、錯乱、dysmetria、運動失調、および、最終的には、昏睡にいたる

熱中症罹患リスク

・精神疾患、アルコール依存症などの既存症、最近または慢性のアルコール消費
・薬物使用(例、利尿薬、抗コリン薬、アルコール、アンフェタミン、など)、
・防護服を着ている(例、運動選手でユニフォーム、ウェットスーツ)
・心臓血管疾患、心拍出量を減少させる脱水、高浸透圧濃度、及び薬物
・労作性熱中症の病歴、不十分な熱順化
・発熱性疾患の最近の存在または病歴
・低いフィットネスレベル
・日焼け
・高い暑さ指数(WBGT;湿球黒球温度指標)、高湿度

検査

・血液検査で肝機能検査ASTおよびALTは、これらは複数の組織からの放出されるものではあるが、熱中症患者における肝機能の臨床的マーカーとして使用されている。
・肝機能検査値の上昇は、最初の損傷後1または2日後に見られる。
・電解質異常、すなわち高カルシウム血症、低リン血症、低カリウム血症、および高タンパク血症なども

診断

・「暑熱による諸症状を呈するもの」のうちで、他の原因疾患を除外したものを熱中症と診断する(日本救急医学会熱中症診療ガイドライン2015より)
・熱中症の各病態の定義や把握はあまり重要でなく、 徴候の重症度の認識のほうが重要
・熱中症のリスクの環境アセスメントは気温だけでなく、湿度などの熱ストレスの正確な評価のための指標(WBGT)を含める

治療

熱中症は医学的な緊急事態
・迅速に治療しなければ死亡率は80%と高いことが報告されている。
・熱関連疾患には重症度の広いスペクトラムを含み、治療選択肢は単に冷却対応や経口水分補給から、急速な能動冷却、集中治療レベルの範囲まで。
・高体温の治療はまず対流空気流にさらされる表面積を増大させるようすべての衣類の除去。空気循環がないと加熱空気の薄い層が皮膚のさらなる対流冷却を防止し、局所絶縁バリアを形成。
・認識した後30分以内に対応開始した場合、死亡率を大幅に低減される。[Mil Med. 2004 Mar;169(3):184-6.]

予防

最も効果的な予防措置としては、
・熱に順化、
・身体活動の期間と程度を減らす、
・一日のクーラー稼働の回数の再計画、
・非アルコール性の飲物の消費の増加、
・既存のウイルスまたは細菌感染症を有するなど脆弱な集団を熱ストレス環境から除く

扇風機による冷却は、熱中症に対する保護を示しておらず、周囲温度>38℃に上昇した熱の不快感と関連している

参考文献

Emerg Med Clin North Am. 2013 Nov;31(4):1097-108.
J Appl Physiol (1985). 2010 Dec;109(6):1980-8.
Br J Hosp Med (Lond). 2012 Feb;73(2):72-8.
J Intensive Care Med. 2013 Nov-Dec;28(6):334-40.

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