関節リウマチの外来をやっていますとときおりステロイド剤を治療に使用することもあります。しかしリウマチ治療においての主役は抗リウマチ薬や免疫抑制剤、生物学的製剤などであり、ステロイドは消炎鎮痛剤(NSAIDs)などとともに脇役です。使用場面としては、診断初期でかつ活動性高いリウマチで疼痛ひどく生活支障もきたしている例でリウマチ薬が効いてくるまでの間に併用してすみやかに炎症をおさえるとき、あとはあらゆるリウマチ薬治療をしても副作用や無効、合併症などで使用続けられずステロイド剤となにかリウマチ治療とでみていくときくらいでしょうか。
関節リウマチにステロイド剤を使用する利点
糖質コルチコイド(以下GC)の関節リウマチ治療に対する有効性は、疾患活動性の制御と関節損傷の進行の遅延の両方において十分に確立されている
GC と従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬 (csDMARD) との併用療法は、長期的なアウトカムを改善するため、RA 治療の初期段階では依然として使用が検討される
重要な利点は、特にメトトレキサートのような従来の合成 (cs-) 疾患修飾性抗リウマチ薬 (DMARD) と比較して、その即効性である
GC の強力な抗炎症作用による症候性効果に加えて、いくつかのランダム化臨床試験のデータでは、低用量GC が X 線検査で骨損傷を抑制する実質的な利点を示している
しかし、糖質コルチコイドにはその利点にもかかわらず、同様によく知られた副作用もあり、長期使用、特に高用量での使用は望ましくない
主な関節リウマチ管理ガイドラインでは糖質コルチコイドの使用を推奨しない(米国リウマチ学会2021)、かcsDMARD の効果が現れるまでの早期 RA のブリッジ療法としてのみ糖質コルチコイドを使用することを推奨している(欧州リウマチ学会2023)
RA患者における糖質コルチコイド (GC) の有効性、使用期間、安全性に関する系統的文献レビュー
2件の研究では、初期治療としてのGCブリッジングの有効性が確認された
30mg/日の初期用量の2年間後には60mg/日のプレドニゾンと比較して同等の有効性が得られた
臨床試験では、最初の GC ブリッジングを開始したほとんどの患者は、12 か月 (22% の患者が GC を継続) から 24 か月 (10% の患者が GC を継続) 以内に GC を中止できた
ステロイド剤の安全性
安全性調査には 12件の臨床研究(RCT)と 21 件の観察研究が含まれていた。結果、骨粗鬆症性骨折、重篤な感染症、糖尿病、死亡率のリスク増加など、GC 使用のよく知られた安全性リスクが確認された
心血管系の転帰に関するデータは一貫していなかった
全体として、安全性リスクは用量および/または期間が増加するにつれて増加していた
RA 患者では、低 GC 用量(プレドニゾン相当量 7.5 mg/日以下)を使用した患者では、心筋梗塞、心不全、脳血管障害の発生率は増加しなかった
患者を平均1.2年間追跡したWeiらの研究では、炎症性関節炎患者群 (n=1165)におけるGC高用量使用(>7.5 mg/日)は CVDリスクの3倍増加と関連していた[Ann Intern Med.2004 Nov 16;141(10):764-70.]
Davisらは、中央値13年の追跡期間にわたる603人のRA患者のインシデントコホートを用いて、GC曝露がRF陽性者、特に累積曝露量が多い人(より高い平均1日用量および GCの最近3か月の使用)においてのみCVDのリスク増加と関連していることを発見した。[Arthritis Rheum.2007 Mar;56(3):820-30.]
まとめ
糖質コルチコイドはとりわけ活動性の高いRA 治療の初期段階ではその利点からcsDMARD の効果が現れるまで、依然として使用が検討される
長期使用、特に高用量での使用は副作用の観点から望ましくない
低GC用量(プレドニゾン相当量 7.5 mg/日以下)であれば心血管系のリスクは高くなさそうである
低用量での長期にわたるGC療法は臨床現場で依然として広く普及しているが、最近のデータは、高齢の患者であってもこの戦略のリスクと利益のバランスがかなり好ましいことを示唆している
参考文献
Ann Rheum Dis. 2023 Jan;82(1):81-94.
Joint Bone Spine. 2023 May;90(3):105491.
Expert Rev Clin Pharmacol. 2020 Jun;13(6):593-604.
Rheumatology (Oxford). 2013 Jan;52(1):68-75.
ステロイドの一般的な注意点は、「ステロイド治療において注意すべきこと」をご覧ください
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