6299777190465681 リウマチ性疾患の疼痛に天候・季節の影響はあるのか? | 感染症・リウマチ内科のメモ

リウマチ性疾患の疼痛に天候・季節の影響はあるのか?

リウマチ・免疫

関節リウマチ(RA)患者さんに限らず、外来をしていますと疼痛や倦怠などの症状への気候変化の影響の訴えはよくあります。とくにこの入梅期は多いですね。
調べてみますと、リウマチ性疾患患者(CRD:関節リウマチ(RA)、変形性関節症(OA)、脊椎関節炎(SpA)など)における気象変数と関節痛との関連性を報告した論文あり、特に夏や冬などの極端な季節・気温における、疼痛に対する天候・季節の影響を報告したものがみられました。しかし他文献では矛盾した結果があり、その効果が偶然なのか直接的な効果なのかは不明でした。 ただ出版バイアスがあるとは思いますが、低温、高湿度、低気圧と疼痛増悪との関連を報告したものも散見され、臨床での実感と合うものであります。

関節リウマチ患者と気象要因

・RAの関節痛は、気温が低いのと相関があった、大気汚染指標、主に二酸化窒素とオゾンは関節痛と相関していた
 気温の10℃の低下は痛みスケール(0-10)の0.5ポイント増加に相当した
・これらの環境要因の影響はリウマチ性疾患の種類とは無関係であったため、環境因子は疼痛知覚メカニズムに直接影響を与えるという仮説が立てられた  (Clin Rheumatol. 2021 Oct;40(10):3929-3940.)

・RAの関節痛に対する季節内の気象パラメータの影響を調べた研究では、圧痛関節数は冬季や夏季で湿度の高さと相関した、また夏季では疼痛の強さは気温が低い、および気圧が低いのと相関があった。春には有意な関連性は観察されなかった (Pain Res Manag. 2020 Sep 7;2020:5763080.)

・RAの活動性指標のDAS-28は日照時間と相関し、晴天条件ではDAS-28の0.037減少と関連していた。湿度の増加はDAS-28 の0.007の増加と関連していた。温度の上昇はDAS-28の有意でない減少と関連した。関節リウマチの疾患活動性 (DAS-28)は晴天が多い条件と湿度が低い条件の両方で有意に低下した  (Rheumatol Int. 2015 May;35(5):887-90.)

・スペインのマドリードでRA症例横断研究では、リウマチ症状の訴えで救急室を訪れた患者が研究に含まれた。50歳から65歳までの患者は、平均気温が低いほど再燃を起こす可能性が16%高かった (Reumatol Clin. 2013 Jul-Aug;9(4):226-8.)

変形性関節症患者と気象要因

・症候性股関節OAの研究では、過去 72 時間の毎日の平均気温変動と疼痛増悪のリスクに有意な用量反応関係があった。しかし日最高気温、日最低気温、相対湿度、降水量、または気圧との間には有意な関連性はなかった。日ごとの気温変動のみが、症候性股関節 OA 患者の股関節痛の悪化と関連していた (Scand J Rheumatol. 2021 Jan;50(1):68-73.)

・変形性膝関節症 (OA) 患者の研究では、朝の気圧と最大湿度の低下、および1日以内の気圧低下と、姿勢安定性の低下との相関が観察された。膝痛は、朝気温が高いとき、および1日のうちに湿気が多くて暖かいときに、より強くなった。天候、痛み、姿勢制御の関係は、患者や医療専門家が日常活動をより適切に管理するのに役立ちます  (Int J Biometeorol. 2017 May;61(5):903-910.)

気象要因の影響に対する様々な仮説

これらの臨床研究では、いくつかの方法論的な限界が存在し、研究の規模が小さい、多くの研究では天候の変化ではなく静的な 24 時間の平均状態に焦点を当てている、ほとんどの研究は単一の地理的サイトで実施され地理的および気象的な変動が限定的である

温度や湿度、気圧変化とリウマチ性疾患での症状変化につきその関連性のメカニズムに関する仮説としては、

・Patberg のレビューでは、温度とリウマチ痛の関連性に関する文献の相反する結果は、温度と湿度の関係と、皮膚付近の微気候に対する温度と湿度の影響によって説明した。(例えば服装の違いなども影響するのでは、とのこと) 微気候の高湿度が関節リウマチの痛みに関係する

・組織(腱や筋肉など)に対する気象パラメータ(気圧と温度)の影響がありそれにより誘発された組織の膨張と収縮によって感作された神経痛に影響を与える
・腱、筋肉、骨、瘢痕組織の密度はさまざまであるため、湿度と温度の変化に起因する膨張と収縮の差異により、微小外傷部位に痛みが生じる
・ビタミンDレベルに対する季節的影響の可能性
気圧と温度の変化により、関節の剛性が増し、機械的ストレスによる痛みに対して関節がより敏感になる
・気圧変化は一時的な体圧の不均衡を引き起こし、神経終末を過敏にする

これらのメカニズムに関する経験的証拠は不足しており、リウマチ性疾患における関節痛と天候との関連性を調べるには大規模な疫学研究が必要である

まとめ

おそらく臨床研究が行われた国や地域ごとに温度や湿度のみならず、四季が明確にあるか降水が頻繁か稀かなどさまざまなであり一般化しにくいところではあるが、リウマチ患者では、日々のと比較しての気温低下や気圧の低下、湿度の増加といった変動で痛みが増す とする報告が多いようである。ただその程度は痛みスケール(0-10)にて0.5ポイント増加程度であり治療の見直しにまで結びつくかどうかはなんともいえない。
皮膚付近の微気候の温度と湿度が大事とする意見もあり服装とかブランケットなどの対応で乗り切るのが良いのかもしれない。

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参考文献

Clin Rheumatol. 2021 Oct;40(10):3929-3940.
Pain Res Manag. 2020 Sep 7;2020:5763080.
Rheumatol Int. 2015 May;35(5):887-90.
Int J Rheum Dis. 2014 Feb;17(2):149-55.

Scand J Rheumatol. 2021 Jan;50(1):68-73.
Int J Biometeorol. 2017 May;61(5):903-9

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