6299777190465681 関節リウマチ治療管理のための各臨床診療ガイドラインのレビュー | 感染症・リウマチ内科のメモ

関節リウマチ治療管理のための各臨床診療ガイドラインのレビュー

リウマチ・免疫

関節リウマチ(RA)への管理/治療アプローチについての推奨やそれを裏付ける証拠は、多くの国や団体で臨床診療ガイドライン (CPG) として臨床医向けにまとめられています。しかし各国各団体のガイドラインは時期も方法も内容もバラバラで、臨床医としてはEULARなどの有名なところとか自国の学会のガイドラインを参考にすることが多いです。今回引用する文献ははじめて各診療ガイドラインを網羅して吟味し系統的レビューを発表されています。RA診療のコアな部分がみえてくると思われます。
ちなみに日本では 日本リウマチ学会が「関節リウマチ診療ガイドライン2020」を最近では発行していますが、残念ながら書籍購入方式で誰でもみることはできません。要点のみの「スライドキット」は閲覧可能です。また英語でもないので、今回の文献では採用されていません。内容的には以下の事項に則したものが多いです。

各国、各団体の関節リウマチ(RA)管理のための臨床診療ガイドライン(CPG)のうちAGREE II 手段で高品質であると判断された13のCPGの推奨事項を総合的に提供するための系統的レビュー 
(13CPGの内訳: 米国ACR2021、アジア太平洋APLAR2015、ブラジル2017、カナダ2022、欧州EULAR2022、イタリア2019、マレーシア2019、英国NICE2018、オランダ理学療法2021、ポルトガル2021、スペイン2019、オランダリウマチ足2018、トルコ2018 )

「行うべき」のコンセンサスを得た推奨事項

チームアプローチ

・患者と臨床医は共有の意思決定プロセスを遵守し、ケアは患者とその状況(例、疾患活動性を考慮、併存疾患)に合わせて調整される すべての患者は教育を受けるべき:病気とその治療/管理選択に関する情報、関節特有のケア (例、フットケアと衛生に関するアドバイス)を含む
・臨床医は、治療/管理選択の利点とリスクを説明する
・臨床医は、健康的な生活習慣(運動、ストレス、疲労の軽減など)の重要性について話し合い、これをどのように達成し維持できるかについてアドバイスを提供する
・「一般的な」運動療法を含む療法を含む運動療法が推奨される
・関節特有のプログラム、例えば手と手首のプログラム、足と足首のプログラム
・足の装具/機能性インソールまたは治療用履物
・ケアに対する学際的なチームアプローチを行う: リウマチ専門医、必要に応じて、看護師、理学療法士、および/または心理的サポート

治療目標と尺度

・治療目標は、疾患活動性の最適化された制御と身体機能の維持を通じて、患者の全体的な生活の質と参加を最大化するのを支援する
臨床的寛解を達成するか、それが不可能な場合は低い疾患活動性を達成する
・治療目標が達成されるまで、疾患活動性を 1~3か月ごとにモニタリングする
6か月以内に治療目標が達成できない場合は、治療を調整する
・疾患が安定している場合は 3~6か月ごとに患者をモニタリングする

疾患活動性を測定するため尺度
疾患活動性スコア 28 関節 (DAS28)、簡易疾患活動性指数 (SDAI) 、臨床疾患活動性指数 (CDAI) 、またはACR – EULAR基準などのその他の尺度

抗リウマチ薬一覧

従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD):メトトレキサートMTX(第一選択)(リウマトレックス®など)、レフルノミドLEF(アラバ®)、スルファサラジンSSZ(アザルフィジン®など)、またはヒドロキシクロロキンHCQ(プラケニル®:日本ではRAには適応外)
生物学的DMARD(bDMARD) :腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤 (レミケード®、ヒュミラ®、エンブレル®、シンポニー®、シムジア®など)、IL-6 阻害剤(アクテムラ®、ケブサラ®など)などの非TNF療法 (オレンシア®など)
標的型合成DMARD(tsDMARD) :ヤヌスキナーゼJAK阻害剤(ゼルヤンツ®、オルミエント®など)

治療開始前の検査

・これらには、併存疾患のスクリーニング、妊娠、胸部X線検査、血液検査、腎臓および肝機能検査が含まれる
・すべての患者は、生物学的DMARDまたは標的型合成DMARD療法を開始する前に結核(TB)感染症のスクリーニングを受ける
・活動性または潜在性結核を患っている場合、生物学的DMARDまたは標的型合成DMARDを開始する前に適切に治療する
・患者は B型肝炎ウイルスまたは C型肝炎ウイルス感染のスクリーニングを受ける

ワクチン

すべての患者は感染症について評価されるべきであり、ワクチン接種特に生ワクチン)は理想的には生物学的DMARDまたは標的型合成DMARD療法の4週間前に提供され、必要に応じて更新される
不活化ワクチンまたは組換えワクチンは、疾患修飾性DMARD、生物学的DMARD、または 標的型合成DMARD 療法の開始前または最中に投与できる
・患者が 生物学的DMARDまたは 標的型合成DMARDで治療を受けている間は、生ワクチンを投与すべきではない

治療

・薬理学的治療には従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)のうち、メトトレキサートMTXを第一選択とする
・MTX は、薬物治療について報告したすべてのCPGで優先される疾患修飾性抗リウマチ薬である
・MTX の用量は、少なくとも10 mg/週~少なくとも 15 mg/週まで
・MTXが禁忌である場合、患者がMTX不耐症であるか、MTXを使用しても治療目標を達成できない場合は、残りの疾患修飾性抗リウマチ薬、すなわちレフルノミド(LEF)、スルファサラジン(SSZ)、またはヒドロキシクロロキン(HCQ)が推奨される
・疾患修飾性DMARD の単独療法で治療目標を達成できない場合は、最初に生物学的DMARD、次に標的型合成DMARDの併用療法を行う
・非外科的治療が効果がない場合、科学的根拠に基づいた手術基準を満たしている場合、外科的治療を推奨

「行うことができる」というコンセンサスを得た推奨事項

・オーダーメイドの靴が適応とならない場合、RA 患者に対して既製の治療用靴を考慮することができる
・疾患修飾性抗リウマチ薬DMARD 療法が効果乏しい場合は、ヤヌスキナーゼ阻害剤、腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤、または非TNF療法を、疾患修飾性抗リウマチ薬DMARD と組み合わせて追加できる
・一方、腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤が効果乏しい場合は、IL-6 阻害剤 が推奨される
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID) は、DMARDと組み合わせて追加できる。最短の期間、最低有効用量で経口で。これには、従来型NSAIDs (±プロトンポンプ阻害剤PPI) または coxⅡ選択的阻害剤)
グルココルチコイドは、再燃を経験した患者に対応して活動性関節リウマチを制御するために、または 疾患修飾性抗リウマチ薬DMARDの開始または変更時に組み合わせて検討することができる。選択した糖質コルチコイドは最低用量で投与し、短期間のみ(3か月未満~ 6か月未満まで)使用するべきである。

「やるべきではない」というコンセンサスがある推奨事項

・他に合理的な選択肢がなく、うっ血性心不全が代償される場合を除き、うっ血性心不全の病歴のある人にはTNF阻害剤を推奨すべきではない
・患者が 生物学的DMARD または 標的型合成DMARD で治療を受けている間は、生ワクチンを投与すべきではない

コンセンサスのない推奨事項

重篤な感染症または癌のあるRA患者に対する推奨については競合しており、生物学的DMARDを推奨したり、疾患修飾性抗リウマチ薬DMARDを推奨したり、標準治療を推奨したりしている
・CPG の大多数は、6か月後 または 12か月後に薬物治療の漸減を検討すべき、または検討できるとしている
・患者が寛解状態にある場合、リウマチ治療は、グルココルチコイド、 生物学的DMARD、 標的型合成DMARD 、特定の臨床状況では最後に 疾患修飾性抗リウマチ薬DMARD の順序で漸減する。しかしあるCPGでは患者がすぐにケアを受けられない、または治療アクセスが不良な場合には、漸減しないとしている

まとめ

臨床医は国地域の最高機関が開発したガイドライン推奨事項を使用することを選択するが、推奨事項の質や推奨事項の矛盾に関する懸念に対処するにはこのような体系的なレビューが重要である。

上記の「行うべきこと」の各項目はエビデンスも豊富で、日常診療において実践していかなくてはならない。

参考資料
Clin Rheumatol. 2023 Jun 9. doi: 10.1007/s10067-023-06654-0.
What are the core recommendations for rheumatoid arthritis care? Systematic review of clinical practice guidelines

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