6299777190465681 ジャクー関節症の特徴 | 感染症・リウマチ内科のメモ

ジャクー関節症の特徴

リウマチ・免疫

SLEなどの膠原病患者では手指など関節痛の訴えがあることが多いですが、ほとんどはその部位は短期間持続で移動性、また関節の腫れなどの炎症はあまりなくびらんを来さないものがほとんどです。たまに持続的な手指関節痛の訴えおよび関節変形がみられる場合もあり、関節リウマチ合併なのか悩ましい。SLEではジャクー関節症といって関節変形はみられるが画像的にも病態的にもリウマチとは異なる病変をきたすことがあります。どういった特徴なのか、見分けるポイントは?

ジャクー関節症とは

ジャクー関節症 (Jaccoud-type arthropathy:以下JA) は、「縮小可能な」パターンを持つ関節変形、つまり受動的操作で正常な外観に戻る関節変形を特徴とする所見である
一度形成された変形は永久に持続するため、「可逆的」という用語は不適切である
1世紀以上前にFrançois-Sigismond Jaccoud によってリウマチ熱(RF)患者に初めて報告された
JA の症例の大部分は全身性エリテマトーデス (以下SLE) で見られる
JA は主に手に観察されるが、足、膝、肩などの他の部位でも見られる
・このような関節症は、他の結合組織疾患や感染症などでも報告されている: シェーグレン症候群、皮膚筋炎、強皮症、サルコイドーシス、およびHIV感染症 など
・関連疾患のない人でもJAが観察されることがあり「特発性」と呼ばれる形態、または高齢者集団では「老化」とされることも

SLE関節症やジャクーなどの用語による文献検索レビューでは、SLE におけるJAの有病率は約 5%、最も一般的な関節変形は、尺骨偏位、スワンネック、および親指の「Z」字型 (Lupus. 2022 Apr;31(4):398-406.)
特徴として、関節の単純 X 線写真では骨びらんはみられない。 より感度の高い画像法、磁気共鳴画像法または高性能超音波検査では、小さな骨びらんが明らかになる場合がある
変形は靱帯や関節包の弛緩、筋肉の不均衡の関与による腱の軸からの二次的な逸脱などの軟部組織の異常の結果であることが認識されている
滑膜炎がこの過程に関与していることもあるが、関節リウマチ (RA) ほど進行性ではない
JAとSLE患者における様々な抗体との関連性を確立しようと研究されてきたが、明確な結論には至らず

SLEにみられる関節病変の分類と特徴

SLE における関節病変はいくつかの臨床表現型サブタイプを示す
・関節痛
・非変形性非びらん性(NDNE)または軽度変形のみの多発性関節炎
・放射線学的に非びらん性の変形性関節症、すなわちJA、
・リウマチ様びらん性関節炎

一過性の移動性関節痛は、関節や腱の炎症の臨床症状がなくても頻繁に報告されている
びらん性関節炎はACPA陽性など示しRAとSLEの重複を示すrhupus症候群と呼ばれてきた、しかし近年は超音波やMRI検査などの感度の高い画像検査の登場で、SLE における非びらん性関節炎とびらん性関節炎の境界は明らかにさらに曖昧になってきている

SLEにおける関節および腱の超音波US所見の研究では(Lupus. 2018 Apr;27(5):794-801.)、 滑液貯留、滑膜肥大、滑膜炎、関節脱臼、骨びらん、といった所見以外にも、腱滑膜炎、腱脱臼、腱断裂、腱菲薄化、腱炎/腱周囲炎、付着部の血流PD信号、低エコー域、肥厚、付着部石灰化や骨びらんなどもみられた。この研究によりSLEの関節および腱におけるUS所見が予想外に広範囲に不均一であることがわかった。
MR研究では、SLE関節炎のサブタイプでは異なるパターンの病変が同定されており、NDNEとJAでは関節包と腱の炎症がよくみられるのに対し、rhupus症候群(リウマチ様びらん性関節炎)は滑膜過形成と骨びらんが特徴である
MMP-3 高値と MMP-12 低値がJA 変形と関連しておりそれらレベルは手MR変化である関節包の腫脹と浮腫性腱鞘炎と関連していた。これからは炎症と組織リモデリング機構の障害の両方がJA の発症に関与している可能性があることを示唆している

JAの治療

関節の変形は、関節機能や生活の質の大幅な低下につながるほど重度になる可能性があるが、効果的な治療アプローチがまだ存在しない
保存的および非ステロイド消炎鎮痛剤、コルチコステロイド、メトトレキサートやヒドロキシクロロキンなどの使用に基づく従来からの方法は変形の発生を避けることができるという保証はない。
rhupus症候群の患者は、増殖性滑膜炎、腱鞘炎と障害をもたらし、骨びらんをきたす傾向が高いため、このタイプでは抗リウマチ薬DMARDs療法を受けるべきである

旧ブログ「ジャクー関節症について」 も参照

参考文献
Rheumatol Int. 2013 Nov;33(11):2953-4.
J Clin Med. 2022 Oct 12;11(20):6016.

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